BABA TOSHIHIDE ALL TIME BEST 1996-2013 〜ロードショーのあのメロディ

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STORY

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Chapter 12

STORYも最終回となりました。もっといろいろな出来事もあったし、文章にはしようのないことももちろんあるし、書かないほうがいいと思うこともあったし、お世話になった人も他にもたくさんいたし、良いエピソードばかりということではもちろんなかったけれど、ここまで思いついたことを書いて来ました。

ところで、たまに思うことがあるんです。ホームページなどインターネットでの交流が盛んになるに連れてお客さんのことを感じられる機会も増えて、だんだん誰が誰でみたいなことがなんとなくわかるようになるじゃないですか。今はそこまででもないですが、10年くらい前は30名くらいのお店でのライブが中心ですからもうお客さんの顔もお名前も全員わかるみたいな世界だったんです。それでたまに、「あの人どうしてるかな」って思い出すことがあるんです。「最近来ていないな」って。今はどうしているだろう、どんな毎日を過ごしているだろう、どんな暮らしをしているだろうって思いが巡るんです。それで気がつくんです。もともとそんなに知らないじゃないかって。ああそうか、そうだった、なんだかよく知っているような気分になっていたけれど何も知らない者同士だったんだなって気がつくんですよね。僕らは普段誰もが皆、しがらみの中で生きている。人や物事やいる場所から逃げたいと思っても簡単には逃げられないし、辞めたいと思ってもそうは辞められない、離れようと思っても簡単に離れられない。そんな中で、お互いに何も知らない、でも知っている、何かを約束したわけではないし、拘束するものも何もない世界がある。気が向けば繋がるし気が向かなければすぐに離れられる。居るにしても去るにしてもそこには自分の自由な意思がある。そんなことがいいなあと思います。もちろんそれだけでもだめだとは思いますが、誰も何もあなたに強制をしない世界があるというのがいい。でもだからこそ自分の意思で選んだつながりを感じたというか人生が交差した日々を愛おしく感じます。そこにあったものはなんだったのだろうかと。一緒に見たものが確かにあったこと。

それでまた思うんです。たとえば5年とか10年とか経って、久しぶりに「そういえば馬場俊英っていたな」「どうしているかな」ってその人が思い立って僕のHPを観たり、数年ぶりに僕のコンサートに来てくれるとして、その時にはその時なりに前を向いている自分を見て欲しいなって思うんです。そうしたらきっと、あの時代は今の暮らしからは遠く離れてしまったけれど、ここでちゃんと息づいていたんだなって感じて、それがなにか自分の人生を肯定的に思うささやかな出来事になるかも知れないって感じるんです。だからそうありたいし、そんなことも僕の励みのひとつです。たまにライブ終演後のアンケートに懐かしいお名前を見つけて「ああ、この人久しぶりに来てくれたんだな」って思うことは最近もよくあります。「どうして急にまた来てくれたんだろう?なにかあったのかな」って思ったり(笑)。20代後半から40代後半まで。音楽を愛してくれる方々の気配に支えられて歩いて来られたと思います。歩いて行くべき場所がある、期待に応えたいと思う人がいる、自分を必要としてくれる時間がある。音楽を作りたい表現したいうという思いだけでなく、そんなことにもどれだけ力をもらってきたかわからず感謝は尽きません。

もうひとつ最近思うことは、歌は帰ってくるということ。「スタートライン」でも「ボーイズ・オン・ザ・ラン」でも「人生という名の列車」でもなんでもいいというかすべてがそうなのですが、口にしたことは回り回って自分に帰ってくる。人に言うことは自分に言うということ。作者である自分自身も生きているから当たり前ですが変化している。時代も環境も変わり経験を重ね考え方もモノの見方も変わっていく中で歌が自分に問いかけてくるんです。見えないスタートラインからまたここからといつの日も感じている自分がそこにいれば、また「スタートライン」を歌えるし、それは生きている歌になる。

STORYでは活動の環境面を中心に書いて来ましたが、言うまでもなく大切なのは音楽そのものであり歌。歌がよくなければなんにもならない。誰と出会おうが誰かが何をしてくれようが何もしてくれなかろうが歌が良くなければどうしようもない。一生懸命がんばろうがサボろうが性格が良かろうが悪かろうが、とにかく作る歌が良くなければ音楽活動をするということにおいてはなんの意味もない。ピカピカにしてもらっても5年10年経てばメッキは剥がれる。いくら下駄を履かせてもらっても長い時間の果てにいつかは裸足で大地に立つことになる。階段を3段5段と飛ばして駆け上がっても、いつかまた飛ばしていった階段を踏み直しに来ることになる。でも歌が良くてもそれだけでもまた、なんにもならない。足元を見つめながら、出会いも大切にしていきたい。そして、好きだと思える音楽をもっと作れるようになりたい。その歌を思うように歌えるようになりたい。そしてそれを届けて小さな何かに貢献したい。今はそんなふうに考えています。

「BABA TOSHIHIDE ALL TIME BEST1996-2013〜ロードショーのあのメロディ」を楽しんでください。作品についてのことはトレイラー12で10分間くらいノンストップで話していますのでそちらを是非ご覧ください。ARIGATO!!

PROFILE

馬場俊英

馬場俊英

1967年3月20日生まれ

1996年メジャーデビュー。

2001年より自主レーベルでの活動に移行。
ライブ活動を中心とした地道な活動が実を結び大阪を中心にブレイク。

2005年メジャー再始動。

2007年紅白歌合戦に出場「スタートライン〜新しい風」を歌う。
デビュー15周年を迎えた2011年、音楽プロデューサー須藤晃と出会い、共に制作活動をスタート。